2012年4月7日土曜日

大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース) 手塚治虫


手塚治虫(24) 「手塚治虫 THE BEST 12 二人のショーグン」

JC(ジャンプ・コミックス)の『手塚治虫 THE BEST』シリーズ、12巻目は「二人のショーグン」(集英社刊)です。

12巻は3編を収録した短編集で、掲載誌と発表年は
「二人のショーグン」・・・・デラックス少年サンデー、1979年。
「赤の他人」・・・・週刊少年ジャンプ、1970年。
「あかずの教室」・・・・週刊少年ジャンプ、1971年。

今回選択された作品を見ると、テーマは手塚治虫先生のお得意ネタの一つでもある『メタモルフォーゼ』…つまり変身を扱った作品、でしょうか。いや、すると「あかずの教室」はちょっと違って超能力モノか。大きく分けて、どれもSF作品。

まず表題作の「二人のショーグン」。4回に渡って連載された中篇です。
中学3年生のショーグンこと有馬将軍(ありままさゆき)は、勝手な夢ばかり押し付ける県会議員の父の元でやる気を無くして落ちこぼ れていますが…捨て猫を拾っては川で魚を取って育ててやり、その数40匹も飼っている優しい少年。
そのうちの1匹でピンクレディーと名付けられたメスのネコがある日、精霊と出会って人間の言葉と不思議な力を得たのです!
それからピンクレディーは、ショーグンに恩返しすべく彼に変身して学校に行き、苦しい受験勉強も代わりにやって親の望む東大法学部へ入ってあげると言うのです。

『私はあなたの身代わりです あなたのいやなことはみんな引き受けますから』

などと言う素晴らしいネコなのですが、ショーグンはヒロインのユリーと仲良くしているピンクレディーに嫉妬したり、クラス委員長の横槍仁から卑劣な攻撃を受けたり…
そういった展開で進むファンタジー学園ドラマは、今度は自分がネコになってその生活まで体験しますが、嫌いな親の失脚により急展開。
どこまでもショーグンに尽くすピンクレディーの姿に、猫好きならずとも微笑ましく思える事でしょう。

この「二人のショーグン」は『THE BEST』を名乗りながらマイナー中心の、このシリーズの中では有名な方だと思いますが、必ず"手塚版「綿の国星」"とか呼ばれますよね。「綿の国星」とは大島弓子先生の代表作でもある少女漫画で、やはり擬人化された猫の物語。
ただし連載開始は「綿の国星」の方が先ですが、手塚治虫先生は当時大島弓子作品を一つも読んだ事が無かったというし、まぁ内容も似ているわけではありません。
そもそも生々しく擬人化した動物キャラが出る漫画は、手塚先生が開拓して広めたものですしね。
猫が人間になるといえば可愛い『猫耳』が気になる方も多いと思いますが、「二人のショーグン」ではネコのように頭のてっぺんではなく人間の耳の位置に大きな猫耳が付いています!これは� �エルフ耳』と言うべきでしょうか(ジャケ写真参照)。しかし、最後に出てくる女の子に注目!!

ただ、正直言って私はこの作品を大して好きではないのです。多少苦手意識のあるサンデーで掲載された作品だからか…化け猫の怪談話なら好きなのですが、これは確かに化け猫ながらほとんどラブコメですからね。
ちゃんとネコの姿したお仲間も出てくるので、『猫漫画』好きにはお薦めします。

次の「赤の他人」「あかずの教室」は奇想を生かした怪奇短編でこちらの方が私の好み。
後者は例の、読み切り短編の連作「ライオンブックス」シリーズとして発表された作品です。

あすこのセガレはネコをダメにしとる!! 扱いを知らねえ
三度三度くいものはあてがいだ 楽をさせすぎとる
だからよワレもさかなの骨がかみくだけねえだろ!
連中ヒヨワになって失業したとき どうしてええかわからねえ
メシもさがせねえ トドのつまりノタレ死にだ
きな 修羅場を見せてやる あれだ あの中にとびこめるかよ?


なぜ少女のように私のボーイフレンドの服を行います
  1. 2010/07/13(火) 23:46:11|
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手塚治虫(23) 「手塚治虫 THE BEST 11 白縫」

乗りかかった船で…『手塚治虫 THE BEST』シリーズの全20巻は紹介しなくてはなりません。続きの11巻目は、「白縫」(集英社刊)です。

このシリーズの刊行が始まった1998年から注目していて、それはもう子供の頃から一番なじみのあるJC(ジャンプ・コミックス)で1960〜70'sのを中心とした手塚治虫作品が読めるのは大変喜ばしい事でしたが、THE BESTを名乗りながら出てくるタイトルがマニアックすぎてだんだん複雑な心境になったものでした。
マーケティングにとらわれないラインナップは良いのですが…これは知られざる傑作を世に広めたいというのなら大賛成も出来ますが、何しろTHE BEST!どんな読者がターゲットなのか不明ですが、さすがは天下の集英社。

今回の11巻は4編を収録した短編集で、掲載誌と発表年は
「白縫」・・・・週刊少年ジャンプ、1971年。
「7日の恐怖」・・・・デラックス少年サンデー、1969年。
「コラープス」・・・・週刊少年ジャンプ、1971年。
「はるかなる星」・・・・週刊少年ジャンプ、1973年。
以上です。
わわっ、またも「7日の恐怖」以外の3作を読み切り短編の連作「ライオンブックス」シリーズで攻めてきましたね。
内容は、環境破壊・戦争・未来のロボット社会…なるほど今回選択されたテーマは、『人間の愚かさ』といった所でしょうか。

「白縫」は、都会へ出て勉強している学生の稲垣伸二が 、郷土研究の提出の課題ために久しぶりに沖中の海へ帰省する所から始まります。
その沖中には、熊本の不知火ほど有名ではないけど同じように、海辺で蜃気楼現象で見える謎の火があって、その名も白縫(読みは同じ『しらぬい』)。しかし故郷は『開発』によって海は埋め立てられ、当然環境は破壊されて海岸も浜も竹やぶもそっくり無くなり、同級生はいなくなっていた…
どこにでもある空港や高級住宅地や歓楽街なんかを作るために白縫の火も見えなくなっていましたが、何とその開発を進めているのが実の兄でした。
伸二は兄の計画に反対して立ち向かい、出会った不思議な女の子と交流する。あ、海の形見とも言える残った入江で彼女と遊ぶシーンがあるのですが、その少女(幼女)は全裸になっていますヨ、旦那!また この少女が可愛いのです。
ラストには少女の正体の謎が分かり、無理な開発をする人間達には自然界からの復讐によるカタルシスが待っています。

「7日の恐怖」は、大林三郎という少年がいつも通り目覚めたら自分の部屋以外が『無』になっていた…奇想モノのSF短編。
7日間で部屋の周りの世界が創られていく、その様は「創世記」と同じ。そして造物主と出会って問答し、消される事となって逃げる三郎の運命はいかに!?
人間は愚かな戦争は止めて、他人を殺したり嘘をついたり欲深く生きたりしてはいけませんよ、うん。

「コラープス」は古代の戦記物。
ニキアス将軍と女奴隷の最後に生まれたロマンスと、家族愛のような物も描いているのですが、女奴隷にされた ヘラの弟・サランが、先祖の神でる"オーディン"に祈り家を焼かれて父を殺された復讐を誓うと、与えられたネズミを使って全てを喰い尽くすのです。それは敵味方の区別もなく、実の姉も無残にも骨だけの姿になるまで。

最後の「はるかなる星」は、打って変わって未来が舞台。
厳しい環境のため脳髄をロボット体に移植(肉体は電子頭脳をはめこんで保存)している火星開拓士・大和路明は、自分の本当の肉体が電子頭脳に乗っ取られた上に地球へ逃げたと知らされ、見かけはロボットの姿のままで追うのですが…
人間より強い『愛』の感情を持った電子頭脳の、ちょっと悲しい話になるのでした。

え 神様 ひどいじゃないか……
人間はひとり残らず消えちまうほど………
どうしようもなくなっていたとは思えないよっ
もう一度だけ……
もう一度だけ時間を もとの世界へもどしてみてくれよ
人間には…希望があるよ
それでもしどうかなっちまったら
今度こそ思いきって世界をつくりかえていいから…


どのように私は彼女を愛して私のガールフレンドを伝えることができます
  1. 2010/07/10(土) 23:35:33|
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手塚治虫(22) 「手塚治虫 THE BEST 10 マンションOBA」

もうちょっとJC(ジャンプ・コミックス)の『手塚治虫 THE BEST』シリーズで続けまして、10巻目は「マンションOBA」(集英社刊)です。

これは表題作の「マンションOBA」と、続く「春らんまんの花の色」はその続編で、どちらも1972年の週刊少年ジャンプに掲載された短編…となると、そう!
例の読切連載、「ライオンブックス」シリーズの中の作品です。
続く「てんてけマーチ」は1977年の月刊少年ジャンプ「四谷快談」は1976年の週刊少年ジャンプに掲載された短編で、この計4作品が収録されているTHE BESTの10巻目は…ズバリ『幽霊』をテーマに選ばれていますね。
それも、どれも全く怖くないユーモラスな幽霊(または妖精、妖怪)たち。

ではまず、「マンションOBA」
"ムサシ野"の地で山が削られ、林も神社も壊されて建ったマンションの名が、OBA・KE(OVER-BUILT APARTMENT KEEPING)! 
そこの住人は、全てムサシ野の自然の中にあったトリデを追い出されたオバケ達なのです。
オバケ達が人間の姿に身をやつしてまでこのマンションに住みついたのは、もちろん自然を破壊する人間に復讐するため。
ただあまりにもあくどいワルである人間には妖魔の力では対抗できないと、訪ねてきた家出少年のタカシに悪の心を持つように育てて、代わりに人間へ復讐させようとするのですが…
結局オバケ達が優しすぎてこの計画は失敗します。
タカシが惚れるハルという花の精が可愛い!ヌードもあります。

で、続く「春らんまんの花の色」ではオバケ達が総出演して暴れ回り、ついには人間を追い出す…と、高畑勲監督によるスタジオジブリの劇場ア� ��メ作品「平成狸合戦ぽんぽこ」そっくりな話。
もちろん「ぽんぽこ」が20年以上も後に作られた作品ですが、高畑勲監督は「マンションOBA」「春らんまんの花の色」のファンだったのでしょうか。
実はどちらも私にとってはどうでもいい部類の作品なんですけどね。

このTHE BEST10巻で面白いのは残る2作。

「てんてけマーチ」は、美しい幽霊・ヒノキの精が太鼓打ちの名人である三兵のじいちゃんに自分を切り倒させて太鼓を作らせたのですが、じいちゃんが死んだら自分を叩く者がいなくなってしまった。
そこで兵隊になりたかった三兵の枕元に立ち、彼の太鼓打ちの腕も名人にまで成長させますが…ついに三兵にも赤紙が。
そして三兵は戦場へ。そこでも太鼓を忘れずにいた三兵でしたが、右手を失っての帰還兵となり、もう太鼓を叩く事が出来なくなった…では三兵の息子・清次は!?
悲劇の中に新しい希望が出てくる、なかなかホロリとする短編です。

「四谷快談」は、タイトルからして「四谷怪談」のパロディとすぐに分かります� �、こちらに出てくるお岩さんが可愛すぎる!
世間では可哀想で恐ろしい…あのイメージしか無いお岩さんですが、「四谷快談」を読んだ後は好きになる事間違い無し。
舞台は戦後の四谷。みなしごの平公という少年がトラックに轢かれそうになった白蛇を助けた事からお岩さんと生活を共にするのですが、彼は空襲で爆弾の破片が視神経を痛めてお岩さんのように左目が潰れていて、もうじき右目も見えなくなる運命でした。
しかし最後はお岩さんが自分の目を平公にあげると右目は見えるようになり、後に平公は隻眼の名投手としてプロ野球で活躍する事になるのです。
ストーリーはそんな所ですが、このお岩さんは平公にオッパイを見せてあげて母親を思い出させてあげたり…オールヌー� �もありますよ。
他にも凄いのが、手塚治虫先生自身が準主役として登場。八百屋に下宿して「鉄腕アトム」やらをシコシコと描いている漫画家で、平公の理解者になるのです。他に例のスター・システムでブラックジャック、ヒゲオヤジ、田鷲警部等も出演しています。

ユウレイではありませんよ亡霊ですよ
ジャズとクラシックぐらいのちがいがあるわ
ユウレイは足がないけど 亡霊は足があるわ
ユウレイのあいさつは「うらめしや」よ 亡霊は何をいってもいいの


日付上では安全でする方法
  1. 2010/06/28(月) 23:32:00|
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手塚治虫(21) 「手塚治虫 THE BEST 7・8・9 フライング・ベン」

続いては「手塚治虫 THE BEST 7・8・9 フライング・ベン」(集英社刊)です。

集英社が1959年から10年間発行していた月刊少年漫画誌、少年ブックで1966年から翌年まで連載された作品で、『手塚治虫 THE BEST』シリーズでは最長となる全3巻の長編。
短い雑誌の歴史の中でいくつか長編を描いているためか、少年ブックといえば手塚治虫先生、というイメージがありますね。
また「フライング・ベン」手塚治虫先生にとってもヒット作を量産していた良い時期にあたりますし、犬漫画好きとしても外せません!

国境の山小屋に一人で住み、国境越えを望む人の運び屋をしている矢野正(タダシ)には頼りになる愛犬のベンがいますが、その弟犬にあたるウルが彼らの行動を阻み、客の3割を噛み殺している。
彼らの目的は何なのか…という序章から、長い過去の話にさかのぼります。

タダシの父親・矢野徹がローマのとある地下洞で"グッドナイト"という� �際秘密結社の追手に殺されるのですが、殺される前に偶然会った雌犬に手帖を渡し、それを日本の家族へ届けるようにと託しました。犬にそこまで難易度の高い願いをして、でもそれを叶えてもらえるのです!
というのも、その時雌犬には三匹の小犬がいて、三匹は偶然見つけた古代の霊水を毎日なめて育ったために身体能力、頭脳共に超犬となって成長したから。母犬と死に別れた三匹は矢野徹の遺言通り日本まで辿り着き、ついには息子のタダシと出会います。
この三匹こそが冒頭に出てきたベンとウル、そして妹犬のプチ。名前はタダシが適当に付けました。凄い能力を持ったこの三匹のミュータント犬は生涯タダシにつくす事を誓い、物語の中心となっていくのです。

父が残した手帳には中近東の砂漠に� �もれた財宝の在処が描いてあり、そのためタダシの母親も殺され、"グッドナイト"に追われ続ける事となります。
また三匹の犬達も性格が全然違っていて、正義の味方然とした性格のベン、目的のためには手段を選ばないウル、優しく奉仕の気持ちが強いプチ。
ウルはその性格のためベンと対立する事となり、兄弟で何度も果し合いをし、タダシにも捨てられていますが一方的な愛を捧げます。やり方は違っても二匹共、生涯タダシにつくす気持ちは忘れていないのが泣けるのです。
ウルが銀行強盗したりギャンブルの八百長で稼いだり(犬なのに!)したのも、タダシが何度も金が欲しいと叫んだからだし…
プチの方は自らの能力を生かしてサーカスに身売りして、タダシに大金をもたらしますが、花形スターとなりながらも 後に不幸な結末を迎えます。

ベンとウル。前者は政府の特殊機関で諜報部員…つまりは007みたいな『00犬』として活躍するようになり、後者はカルロスという犬を愛する"グッドナイト"の一員に手なずけられてと、ますます対立は激化。それでも二匹は時に相手の命を助けたり、複雑な兄弟です。

タダシは最初から人間で唯一の味方になってくれた私立探偵の伴俊作らと、ついに父親の残した地図を頼りにシルクロードへの冒険に旅立ちますが、行く手を阻むあの組織!
"グッドナイト"の正体もだんだん分かってきますが、ボスはダーク・グレー大首領という独眼流の男。他も魅力的な敵達にあふれる組織でした。
おっと伴俊作とはもちろん手塚治虫式スター・システムを代表する俳優、通称� �ゲオヤジと呼ばれるあの男ですよ。「ジャングル大帝」「鉄腕アトム」「バンパイヤ」「ブッダ」…数多くの代表作を持ち、手塚キャラ一の古顔ですね。

ベンの活躍で"グッドナイト"は壊滅しますが、あれ?見つけた財宝はどうなったのか、そんな事はどうでもいいからか描写がありません。
だって最終対決はこちら…共にタダシを愛すベンとウル!やはりどちらかが死ぬまで、闘うしかない運命なのです。
どちらかといえば悪役に描かれたウルは、最後まで殺人を繰り返しますが、これも妹のプチの敵討ちとして人間達をキバで噛み砕く決心をしたわけだし、『犬のほこり』があるから人間のいいなりにはならず、ウルトラ犬ともてはやされるベンを笑い飛ばすカッコいい奴。

何度も強敵を倒してきた正義の ベンですが、実はでかい敵を倒す時は残酷!
プチを襲ったライオンの時は自ら口の中に突っ込んで首を切り取って血まみれで出てきたし、"グッドナイト"の化物犬タフが相手の時は同じやり方で口から体を引き裂いてしまいました。


さてプチの墓の上で行われた最後の闘い。それから感動のエンディングまで、見事!
ベンとウルの運命の分かれ方、敵対関係になりながらも奇妙な友情というか兄弟愛があり…気を揉みながら一気に読んでしまう事でしょう。
あえていうと一本気な犬達より、人間の主人公であるタダシの性格の方がイマイチでした。あれ、と思う行動がありましたが、これは人間だから悩み揺れる事もあるという事でしょうか。

なあベン プチはここにひとりぼっちで さびしいだろうなあ……
おまえか おれか どっちか一ぴきがつきそってやればよろこぶぜ……きっと……
なあにね……プチとならんで この土の下にはいるにゃ……
どっちかが死ななきゃならないということさ!

  1. 2010/06/25(金) 23:17:06|
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手塚治虫(20) 「手塚治虫 THE BEST 6 ガラスの脳」

今夜も『手塚治虫 THE BEST』シリーズの続きで、6巻目は「ガラスの脳」(集英社刊)です。

今回は5編を収録した短編集で、順に掲載誌と発表年を見てみると、
「ガラスの脳」・・・・週刊少年サンデー、1971年。
「グロテスクへの招待」・・・・月刊少年ジャンプ、1981年。
「ふたりでリンゲル・ロックを」・・・・月刊少年ジャンプ、1982年。
「るんは風の中」・・・・月刊少年ジャンプ、1979年。
「0次元の丘」・・・・週刊少年サンデー、1969年。
となっていて、掲載誌もですが発表年に十数年もの幅があります。

それでもこのシリーズで収録される短編は、巻それぞれに共通するテーマで選んでいたと思うのですが…
どうも6巻は良く分かりません。異形の物に対する恋愛モノか、とか他にもいくつか考えられるのですが一つは当てはまらなかったり。生命の� �秘、だとか奇想SF、とかかな。

まず表題作の「ガラスの脳」は、列車事故に遭遇した臨月の妊婦から奇跡的に生まれた赤ん坊の由美が主人公。しかし彼女は、生まれた時からずっと昏睡状態なのです…
眠ったまま成長していく由美が十歳を越えた頃、同病院に入院していた同い年くらいの長沢雄一という少年が由美を発見し、絵本の『眠り姫』のようにキスで目を覚めさせようとする。
そんな話なのですが、凄いのがこの雄一。それから日課のようにキスをして、退院しても日曜ごとに通ってはキスを繰り返して、それが何年も続くのです!
身動きできない少女に毎日キス…しかも何年もって、いくら少年でも偏執で変質すぎてヤバイ。

体だけは健康に成長していく由美が十七歳を迎えた ある嵐の夜、雷と共に由美は目を覚ますのです。(このシチュエーションだと、フランケンシュタインの怪物が動き出す時のイメージなのでしょうか)
目覚めて一日目は心は赤ん坊のようだったのに、二日目には小学二年生の知能まで追いつき…2時間に1年分の知識を吸収して十七年間のブランクを取戻していく由美!
三日目には精神年齢が肉体に追いついちゃうのですが、そんな不自然な存在は神さまが許さないのか、五日しか起きていられないと『誰か』に言われて知っています。
そして『誰かを愛したいの』という由美は好きな人もいると告白するのですが、それは残念ながら雄一ではなく、院長先生。
しかし当の院長先生は、実は由美の意識がないのをいいことに……いたずらをしていた変態医師だった事が判明!

雄一は院長を殴り、由美は自殺しようと胎児の頃に事故った列車へ飛び込みますがギリギリで雄一が助け、二人は大急ぎで結婚して、という怒涛の展開からついに運命の五日目を迎えます。
神さまだか何だかの宇宙の大きな力によって、また…死ぬまで続く深い眠りに落ちるのでした。
二度と目を覚まさない由美と、雄一は子供の時と同じような偏執さで家庭生活を続け、六十二歳で死ぬまで共に暮らすのでした。雄一が希望して解剖にふされた由美の脳は……。

"真っ直ぐ"で"永遠"な愛を描いた作品ですが、どこか恐ろしい人間(雄一、由美共に)の思い込みも感じる作品。
これを10年前に中田秀夫監督が代表作となった「リング」のすぐ後に映画化したというニュースを聞いた時、恐ろしいサイコホラーとして� ��ってくれたかと期待したのですが、どうやら原作「ガラスの脳」をロマンチックな純愛という部分だけを解釈して作っちゃったようで…観に行けませんでした。

続いてどんどんいきましょう。
「グロテスクへの招待」は、短いページ数で雄作ネリの重要な幼年期から少年期が終わるまでを描いてます。
こんなタイトルですがグロテスクなホラーではなく、むしろ恋愛要素を持ったロマンチックでノスタルジックな奇想物語。


「ふたりでリンゲル・ロックを」は、これも未来のSFな恋愛モノと言えますが、"1989年の未来"のコンピューター社会描写がちょっとおかしい。
世界で始めての宇宙人の誕生までを描くのですが、まぁこれはイマイチ。

次の「るんは風の中」は好きな作品で、友達のいない学生であるアキラが暗い日々の中、高架下に貼ってあるポスターの少女に惚れて、るんと名付けた彼女と饒舌な会話を楽しむ…また妄想系の話。
ポスターのモデル…つまり本物のるんと会うエピソードやラストも、悲しいながらのハッピーエンドが良いのです。
手塚治虫先生お得意のスターシステムで、あの名作「ミクロイドS」などに出ていたノラキュラが登� ��してくるのも嬉しい。

最後の「0次元の丘」は、輪廻転生をテーマにした不思議なお話…でした。

だって あたしはただの思い出だけなんですもの
そうよ思い出の記録にすぎないのよ
だからとまったまま……
未来はないの



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